砂漠の真ん中に町があった。でもそこに住んでいるのはロボットだけだ。そして、ここには新しいロボットはいない。みんな古ぼけたロボットばかりだ。人間というものはたとえ使える機械でも古くなれば捨ててしまう。ここはそんな風に捨てられたロボット達が作った町なのだ。だからこの町に人間は立ち入ることは出来ない。みんな人間が大キライなのだ。

 

 この町の噂を機械好きのミノル君が聞いてきた。そしてみんなに相談した。「どうしても行きたいんだよ」ミノル君が言った。「だって、人間は入れないんでしょ?」モモタ君が言うと「そんな事判っているよ。だから良い考えが無いかみんなに相談してるんじゃないか。」「でもなあ。」ムタ君がうなる。みんなでしばらく頭をひねっていたとき、マナタ君が言った「ロボットになれば良いじゃん!」「え〜っ?」みんなは顔を見合わせた。

 

 みんなは石油缶などを使いロボットを作っていた。と言っても外側だけだ。これをかぶってロボットに変装しようと言うのだ。やがて思い思いのロボットが出来上がった。マナタ君のはなんだか手が長すぎるけどまずまずの出来だ。ミノル君のはまるでテレビに出てくるようにカッコイイ。

 

メグロ君のは大きくていかにも強そうだ。モモタ君のはでっぷりとしていかにも重そうだ。そしてムタ君のは・・・実にカッコ悪かった。なんだか今にも壊れそうな・・・いや、既に壊れている感じである。ところがどういう訳か本人はとてもカッコイイと思っているようだ。

 

「よし、行こう!」みんなは早速出発した。途中まではそらどんに連れて行ってもらうことにした。みんなと会うとそらどんが聞いた「そんなに荷物を持って何をする気だ?」「ロボットの町に行くのさ。」ミノル君が答えた。「ロボットの町?たしかあそこには人間は入れないと聞いたが。」「大丈夫!作戦があるんだ。」マナタ君が言うと

 

「まあいい。おまえ達がそう言うのならきっと大丈夫なのだろう。」そしてそらどんはそれ以上何も聞かず、みんなを運んでくれた。降りた場所はロボットの町まで歩いて30分くらい手前のところだった。ここからは歩いていくのだ。

 

町の前まで来た。門のところには強そうな門番が2人居た。みんながわざとギイギイ音をさせながら門の前に来ると門番が言った。「何のようだ?」ミノル君が言った「僕たち捨てられたロボットです。ここなら、僕たちも壊されないで済むと聞いてやってきたんです。」

 

門番は目のようなカメラをじっと向けしばらくすると「よし、入ってよろしい!」と言った。「ありがとうございます。」みんなはそう言うとぞろぞろ入って行った。「待て!」一番後ろにいたムタ君が入ろうとしたとき門番が呼び止めた。“バレたか?”みんなは思った。

 

すると門番は「おまえ、だいぶひどいな。こりゃきっとどこかが壊れているに違いない。門を入ってすぐの角を右に曲がると修理屋がある。そこで見てもらうと良いだろう。さあ行け。」ムタ君は「ありがとう。」といって入っていった。

 

ムタ君がみんなのところへ行くとミノル君が「ばれたかと思ったよ。」と大笑いしたいのをこらえて震えながら小声で言った。周りのみんなも笑いを堪えているせいで、同じようにぶるぶる震えている。

 

一人だけつまらなそうにムタ君は「ちぇっ、こんなにカッコ良いのに、あのロボット判ってないなあ。」とぼやいた。何はともあれ町に入ることが出来た。みんなは早速町を見物することにした。

 

町の中はたくさんのロボットが居た。噂通りどれも古く壊れかかったロボットばかりだ。あるロボットは腕が左右違う長さだった。またあるロボットは脚の代わりにタイヤがついていた。どうも有り合わせのもので修理しているようだ。

 

家並みはまるで普通の町と変わりなかった。なぜならこの町自体が捨てられた町だったからだ。そこをロボットたちが少しずつ修理しながら住んでいるのだ。

 

町の真ん中には一際大きな木が植えられている。オリーブの木だ。そういえば同じような木があちらこちらに植えられていた。それを見てミノル君が「ああなるほど!」とつぶやいた。マナタ君が「なにが?」と聞くと、

 

「どうして砂漠の真ん中でロボットたちがずっと居られるのか不思議だったんだよ。だって、普通なら細かい砂とかが身体の関節に入り込んだりオイルが切れたりしてすぐに動けなくなっちゃうでしょ?でもオリーブの実からはたくさんオイルが取れるから、これを使って掃除や潤滑油として使ったりしてたんだね。」それを聞いたみんなは「へぇぇ!」と感心して声をあげた。

 

また町には車やバイクもちろん自転車とかの早く移動するためのものは全然なかった。あるのは乗るためではなく、運ぶためのトラックだけだった。しかも運転席はあるが運転手は居ない。このトラック自体がロボットなのだ。

 

観察していてとても感心したことがあった。そのトラックが、ある建物の前にたくさんの荷物を運んできた。すると通りかかったロボットたちが集まってきて、みんなで一緒に運び始めた。ロボットはその後も増えていき、たくさんあった荷物があっという間に片付いてしまった。

 

運び終わるとロボットたちはまた何もなかったように、それぞれどこかに行ってしまった。もちろんお手伝い賃なども受け取らずに。そう、ロボット達は何かを欲しくて働いているのではなく、ただ親切のためだけに働いていたのだ。このようにロボット達はお互いに助け合いながら生活してた。

 

そうやってみんなが、見物しながら歩いていると、目の前で急にロボットが立ち止まってそこから動けなくなってしまった。どうやら足の具合が悪くなったようだ。そのロボットがこっちを見て言った「ふうう、とうとう動かんようになってしもうたか・・・おいちょっとそこのあんたたち!おや、あんたら見ぃひん顔やな。新入りかいな?まあええ、すまんけどわてをそこの修理工場まで連れて行ってくれへんか。」

 

「どうしたんです?」ミノル君が聞くと「最近脚の調子が悪いなぁと思っとったんよ、そしたらとうとう動かへんようになってもうたんや。」「僕が見てあげましょうか?」「なんやて?あんた修理デケるんか?」「ええ、簡単なものなら。」「そりゃぁええ!そんならいっちょ頼むわ!」

 

「とりあえず見てみましょう。でも僕が修理している間はこっちを見ないでくださいね。」「何で?」「だって恥ずかしいじゃないですか」「けったいなこと言うなぁ、なんやそれ?・・・まぁなんでもエエわ、その代わりかっこ良ぉ直してや」ロボットは首を180度回転させ、ミミノル君がカメラに写らないようにした。

 

「こんなんでエエか?」「良いですよ。それじゃ始めます。」ミノル君は缶の下から手をニュウッと出して修理を始めた。「どれどれ?ははあなるほど、ここか・・・ここをこうして・・・これでよし、終わりました。これでもう動くはずですよ。」「なんやて?もう終わったんか?」

 

ロボットはびっくりした様子でゆっくりと脚を動かしてみた。「おおっ、なんと直っとる!かっこ良ぉはなっとらんけど、直っとる!」そして言いながら嬉しそうに歩き回った。「なんや前よりも調子がエエみたいや!おおきに!」

 

「良かったですね。それじゃ。」言い残してミノル君達はまた、見物を続けるために歩き出そうとすると、ロボットが言った「ちょっと待った!」「はあ?」「あんたはスゴ腕の修理ロボットや。わてと一緒に来てくれへんか。」「どこへですか?」「そんなん修理工場に決まっているがな!」そしてみんなは無理矢理修理工場へと連れて行かれた。

 

修理工場へ着くとロボットは大声で言った「おーい、ドクーっ。ドクはおらんか?」すると「ここじゃ!」奥の方からこれまたあちこち凹んだオンボロのロボットが出てきた。ドクと呼ばれたロボットはでっぷりとした体に細い腕が6本、そして脚の代わりにタイヤが前に大きいものが2つ、後ろにちいさいものが1つ着いていた。

 

「なんじゃ?騒々しいと思ったら、ヤンケまたお前か。」このロボットはヤンケというらしい。「おー、居た居た、あんた前から助手が欲しい、助手が欲しいって言うてたよな。感謝しぃや、このわてが探してきてやったで!」そう言うと脚を直してもらったロボットはミノル君を指差した。「なに、助手じゃと?」ドクはミノル君の方へカメラを向けてじろじろ見回した。

 

ヤンケは言った「この足を見てみぃ、あいつに修理してもらったらホレこの通りや!」と自慢げに歩き回ってみせる。「なに?見せてみなさい。どれどれ・・・」ヤンケの脚をしばらく調べると驚いて言った「なんと、こんな細かい修理が出来るなんて!まるで人間の様じゃないか!すばらしい!・・・決まりじゃ!ぜひここで働いてくれ!」

 

「はあ…(本当は僕たちこの町を見物したいだけなのに…)」ミノル君は思った。「よし、早速今日から働いてもらうぞ!」「はあ…、判りました。」「よしよし、君の名前は?」「ミノ・・・ミノックです。」「ミノックか。ふむふむ、これからよろしく頼むぞ、ミノック!」

 

そこでやっと他のみんなに気づいたドクは「ところでそっちの4人は何者じゃ?」今までのやり取りをボ〜と見ていたマナタ君たちは「僕たちは・・あの・・その」急に話しかけられたのでしどろもどろになっていると、ミノル君が「僕の患者なんです」と助け舟を出した。

 

「ふむふむなるほど、それだけの腕を持っていたら患者もさぞかし多いだろうな。(ムタ君を見て)特にひどそうなのも居る事だし・・・」とすぐに納得してしまった。ヤンケもムタ君を気の毒そうな顔をして見ている。

 

突然ヤンケは「しもうた!仕事が途中やった。ほんじゃワイは行くで。しっかり頑張るんやで!」と言うなりあわてて部屋を出て行った。それを見送りながらドクは「あいつもここに来た当事はちゃんとした標準語だったんじゃが、内臓辞書にバグがあるのか、いつのまにやらナンチャッテ関西弁になってしもうたわい・・・」。

 

「それにしても!」ミノル君のほうに向き直ると「人間と言う奴はこんなに優秀な修理ロボットまで捨ててしまうのか?なんとも愚かなことじゃな。さて、早速だがミノック、君はここに居て患者が着たら診てやってくれ、わしは奥でちょっとやることがあるでな」そう言い残し、さっさと奥の部屋へ行ってしまった。そんな訳でミノル君は修理工場で働くことのなってしまった。

 

冒険クラブの仲間以外に誰も居なくなるとムタ君は怒って言った。「なんだい、なんだい、みんなして失礼だな。俺のどこが壊れているっていうんだ?」それを聞いて今までずっと笑うのを我慢してたみんなはやっとここで気兼ねなく大笑いすることが出来た。

 

「さて、これからどうしようか?」マナタ君が言った。「もうこの中も大分見てまわったし、そろそろ帰る準備をしないとな」とメグロ君。「でも黙っていなくなるのも、ちょっと申し訳ないな」とミノル君。「そうだなぁ、人手、じゃなくてロボット手が足りなくて困っているみたいだったしね」とムタ君。

 

みんながどうしようか迷っていると「ねえ、手が足りないんだったらドクに新しい手をプレゼントしようよ。」モモタ君が言った。「新しい手?」みんなが同時に聞いた。「うん、だって、ドクの今の腕じゃ細かい修理が出来ないって言ってたじゃない?」「なるほど。それは名案だ、そうしよう!」

 

早速みんなは修理工場の中にある色々な部品を集めてきて作り始めた。初めは1本のつもりだったが、アイデアを出し合ってたらいつの間にか2本出来上がっていた。みんなはその腕を持ってドクのところへ行った。

 

「ドク!」ミノル君は呼んだ。「うん?なんじゃミノック」「ドクに僕たちからプレゼントがあるんです」「なに、プレゼントじゃと?」振り向きながら周りを見回しみんなを見ると、「おや、君らは患者じゃなかったのかね?」と言った。

 

そしてみんなが持っている腕を見て「何じゃそれは?」と聞いた。「新しい腕です。これがあれば細かい修理も出来るようになりますよ。」「なんと、それは本当かね?では早速つけてみよう。」ミノル君達は新しい腕をドクに取りつけた。

 

ドクはその腕に付いている7本指を動かしてみて言った。「これはすごい!こんな細かい動きが出来るなんて!今まで直せなかったロボット達もこれなら修理できるぞ!なんて素晴らしいんだ!」ドクは大喜びした。そしてミノル君をまじまじと見て「こんな物が作れるなんて君たち本当にまるで人間のようだなあ。」と言った。みんなは内心“ドキッ”とした。

 

ちょうどその時だった。外で騒々しい音がし始めた。「なんだなんだ?」窓から外を見ると道の真ん中で大型のロボットが大暴れてしていて、その周りを警備ロボットが取り押さえようと必死に動き回っている。

 

それを見たドクは「いかん!またショートしたな。あいつはああなると電池が切れるまで暴れつづけるんじゃ。図体はでかいがああ見えて素早いものだから、この前なんか止まるまでに20台以上の警備ロボットが壊されたんじゃよ。」「何か止める方法はないんですか?」ミノル君が聞くと「首の後ろのスイッチさえ押せれば良いんじゃが、動きが速すぎてなかなか出来ないんじゃ」とドク。

 

みんなは顔を見合わせうなづくとミノル君が言った「僕たちに任せてください。」「何を言っておる。危ないから君はここに居るんじゃ!」「大丈夫です!」そう言うとみんなは外へ駆け出して行った。

 

大型ロボットの前に来るとミノル君は言った「すぐに直してやるからおとなしくしろ!」と言った。しかし大型ロボットは何も聞こえない様子で手や脚をブンブンと振りまわしている。「何とかスイッチを切らなくちゃ!」

 

しかしロボットの動きはドクが言った通り素早く、みんなで取り囲んでみたもののスイッチの位置も高く、押すことが中々出来なかった「このままじゃ何も出来ない!仕方ない、みんなロボットの変装を取ろう!」マナタ君の掛け声でみんなは一斉にロボットの変装を脱ぎ捨てた。

 

周りではどよめきが起こっていた。「人間だ!」「人間が入り込んでるぞ!」冒険クラブのみんなにもその声は聞こえていた。しかし今は暴れている大型ロボットのスイッチを切ることにだけ神経を集中した。

 

まず、初めに動いたのはメグロ君だった。メグロ君は正面から振り回している腕ごと大型ロボットに抱きついた。大型ロボットは振りほどこうとしたが、渾身の力で抱きついているメグロ君を引き剥がすことは出来なかった。

 

その次はマナタ君とミノル君が大型ロボットの左右の脚にそれぞれしがみついた。そのせいでロボットは歩くことが出来なくなってしまった。そこへモモタ君を肩車したムタ君がダッシュした。モモタ君の手は迷わずロボットのスイッチまで伸び、そしてボタンを押した!途端にロボットから段々と力が抜けていき、やがて動かなくなった。

 

みんなは地面に座り込んで荒い息をついていた。しかし周りではまだ大型ロボットが止まったことより、人間が町に入り込んできたことに対して驚きと怒りのどよめきが続いていた。そしてそれはさらに大きくなってきていった。

 

やがてエスカレートしたロボットたちは「人間を追い出せ!」「捕まえろ!」「牢屋に入れてしまえ!」と口々に騒ぎながら、徐々にみんなを囲む輪を狭めてきた。しかし、みんなは大型ロボットを止めるのに全力を出してしまったため、そこから逃げ出す力も残っていない。

 

その時である、一際大きい声が聞こえた。「待てやっ!」声のする方を見るとそれはさっき、ミノル君を修理工場へ無理やり連れて行ったヤンケが立っていた。

 

「みんなちょっとわしの話を聞いてくれ。確かにわてらは人間がキライや、いや大キライや。わてらが壊れれば直そうともせぇへんで捨ててまう。ホンマ身勝手でしょうもない奴らや。けどな、そうじゃない人間ばかりじゃないと思うんや。そう、あいつらのような人間や。

 

みんなこの足を見てみぃ、これはそこに居るミノック・・・ホンマの名前は知らんけど、そいつに直してもらったんや。そいつはわてらを使うことばかりでなく、直すと言うことも学んでる。それこそ、しょうもない人間ばかりやないと言うことの証明や!」。

 

「その通り!」今度は別の方角から声が聞こえた。「町長だ!」「町長が来たぞ!」「町長だ!」1台のロボットが他のロボットをかき分ける様にして出てきた。なんと、それはドクだった。「みんなわしを良く見ろ!手が2本増えているだろう。今までよりもっと細かい修理が出来る様にと彼らがこの腕をプレゼントしてくれたのじゃ。」

 

それを聞いたロボット達はざわめいた。「それにみんな忘れてはいないか、人間は大きなダメージを受けたら死んでしまう。わしらと違って簡単に修理しても元通りに直すことが出来ない。それなのに自らの危険を顧みず、しかも壊すことなく大型ロボットを止めてくれたということを。確かにわしらは今まで人間達を恨んできた。それはなぜだと思う?

 

実はわしらはみんな寂しかったのじゃ。現に人間たちのために働いている時わしらはみんな幸せだったじゃろう?それだからこそ捨てられたときは悲しくて、寂しくてどうしようもなくて終には恨んでしまったのではないか?」ロボットたちはみんなシンとして聞いている。

 

「だがな、わしはもう恨むのは今日限り改めようと思う。人間全部を恨む必要はないのじゃ。悪い人間には注意するだけで良いじゃないか。ここにいる彼らは良い人間だ。わしが保証しよう。確かにわしらをだましてこの町に入ってきた。

 

しかし、わしらが困るようなことを何か一つでもしたじゃろうか。彼らがした事はただわしらを助けてくれたことだけじゃ。だから、わしは彼らに礼を言いたい。“この町に来てくれてありがとう”とな。」

 

町長の話を終えたときには、もうみんなを非難する声はひとつも聞こえなくなっていた。代わりに聞こえてきたのはポツリ、ポツリと礼を言う声だった。それはだんだんと膨れ上がり、やがて歓声へと代わっていった。

 

「だが、一つだけ言わせて貰おう!」ドクが大声で言うとまた辺りはシンとなった。そしてミノル君たちを睨みながら言った「彼らは、この町の客としては受け入れることは出来ない。なぜなら人間だからだ」ロボットたちのあいだに戸惑いの声が上がる。“この人間達を受け入れるべきなのか、追い出すべきなのか”“恨むのか、恨まないのか”

 

そしてドクは言った「実はな、彼らはさっきわしの助手になってしまった。だから彼らは客としては受け入れらないが、この町の住人として受け入れようと思う。どうじゃ、みんなそれで良いかな?」ロボットたちはまた一斉に歓声を上げた。そしてミノル君たちの前まで来て、「驚いたかね?わしを騙したお返しじゃ」と笑いながら言った。その後も歓声はいつまでも、いつまでも続いた。

 

そのあとミノル君達は町長にバッジをもらった。そのバッジの裏には次のように書かれていた“このバッジを有するものは、たとえ人間であろうともロボットと同じ扱いを受けられるものとする。” 冒険クラブのみんなは、この町のロボット達に受け入れられた初めての人間となった。

 

やがて帰る時間になった。大勢のロボット達が門のところまで見送りに来た。「ドク、いろいろありがとう。また来ます。」ミノル君が言った。「うむ、待っておるぞ。それまで難しい修理はとっておくからな。何と言っても君たちはわしの助手じゃからな。」

 

「判りました。その時は任せてください。」すると門の上のほうからヤンケが「おーい、ミノックーっ!今度は脚だけじゃなく顔のほうも直してくれやぁ、もっとかっこ良くなぁ!」と大声で言った。「判りました、必ず!」ミノル君も大声で言った。

 

「それじゃみなさん、また来ます、さよなら!」ロボットたちもみんな手を振って見送ってくれた。

 

 門のところから30分ほど歩いたところでそらどんの笛を吹いた。町で呼んでも良かったのだが、大きなそらどんにロボットたちが驚いてもいけないので、少しはなれたところで呼ぶことにしたのだ。

 

待っている間、マナタ君が「ロボットじゃないのがバレて、みんなが“人間を捕まえろ!”て言ったときどうなるかと思ったよ。」と言うと「もしも一斉に取り押さえられてたら、さすがの俺も疲れちゃってて何も出来そうに無かったしな。」とメグロ君が言った。

 

「いくら俺でもあれだけの数のロボットが相手じゃ逃げられないだろうし。」ムタ君が言っうと、「良いロボットばかりで良かったよね。でもホント疲れたなぁ。」モモタ君が言った。するとミノル君が「そんなに疲れたんなら僕がちょっと見てやろうか?なんて言ったって僕はドクも認める名医だからね。」ミノル君が言うとみんなは大笑いした。

 

そのとき遠くから鋭く鳴く声が聞こえた。西の空を見ると、真っ赤な夕焼けの中で迎えに来たそらどんがぽつんと黒く小さく見えた



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