ロボットの町 Episode2


前編




 今日は終業式、明日から待ちに待った夏休みだ。冒険倶楽部のみんなは、夏休みに計画している冒険のことを考えるとワクワクする気持ちを抑えきれない様子だ。

 

 「裏山の洞窟探検は、やっぱり外せないよな!」とムタ君が言えば、メグロ君も負けずに「それより野生のスイカがたくさんあるっていうジャリ川の上流探検だろ?」と主張する。みんながそれぞれ冒険したいところを言い合う中、ミノル君一人が浮かない顔をしていた。

 

それに気づいたマナタ君が「ミノル君元気ないなぁ、どうかしたの?」「う〜ん、ちょっと気になることがあって・・・」みんなが心配そうに見ていると、ミノル君もみんなの顔を順に見回し説明を始めた。

 

 「僕さ、定期的にロボットの町のドクとメールのやり取りをしていたんだけど、先週あたりから全然返事が来なくなっちゃってさ。試しにヤンケにもメールしてみたんだけど、そっちも返事が返って来ないんだ。もしかしたら何かあったんじゃないかと心配なんだよね。」

 

「う〜ん・・・」どう言うわけなのか、みんな考え込んでいると、マナタ君が言った「よし、それじゃ最初の冒険の行先はロボットの町にしよう!」それを聞くとミノル君にも笑顔が戻り、みんなも「それで決まりだっ!」「それが良い!」と声をそろえた。

 

 次の日の朝早く、みんなはいつもの広場に集合した。「みんなちゃんとバッヂ持ってきたか?」マナタ君が聞くと、「もちろん!」とそれぞれが胸や腕につけたバッヂを見せた。このバッヂが無いとロボットの町に人間であるみんなは入ることができない。

 

「よしそれじゃ行くか!」と言って襟の裏側から1枚の羽根を取り出し、それを口に当てると思いっきり吹いた。「ピーッ!」澄んだ音が響き渡り、しばらく待つと、遠くにポツンと何かが見えてきた。

 

もしもそれに他の誰かが気づいたとしたら、やがてそれが鳥だと分かる。しかし近付くにつれ、その大きさが尋常でないことに気づくだろう。さらにそいつが真上に来たりした時には恐怖のあまり気絶してしまうかもしれない。しかしもちろん冒険クラブのみんなは気絶などすることもなく、うれしそうに大きく手を振って挨拶した。

 

巨大な鳥は広場の上空で1回転するとみんなのもとに降りてきた。「バサーッ、バサーッ」。間近で見ると信じられないほど大きく、頭の位置などは向こう見えている2階建ての家より高い。彼こそ古の末裔と言われるそらどんだ。

 

みんなが近づいてくるとそらどんはよく響く低い声で「久しぶりだな、今度はどこへ行きたいのだ?」と尋ねた。マナタ君が「うん、実はね・・」後を引き取ったミノル君が事情を説明する。

 

「ふむ、なるほど。そういえば少し前にあのあたりで大きな砂嵐があったと聞いた。それが関係しているかもしれんな。」「えっ、砂嵐?」「そらどんお願い、ロボットたちの町まで僕らを連れていって!」するとそらどんは無言で体勢を低くし、片方の羽根を広げた。

 

みんなはその羽根をよじ登り、背中に上がると、体をなるべく深く羽根の中へと潜り込ませ、両手でしっかりと目の前の羽根にしがみついた。「用意は良いか?では行くぞ!」そういうとそらどんは空に向かって大きく羽ばたいた。

 

 5人を乗せてもなお余裕のあるはばたきを見せるそらどん。いまさっきまでいた広場が見る見る小さくなっていく。かなりの急上昇だが、これでも背中のみんなが振り落とされないようになるべくゆっくりと飛んでいるのだ。

 

雲の中を突っ切り、やがて強い気流をみつけるとそこでやっと水平飛行に移る。あとはロボットの町がある砂漠まで大きく広げた羽根に風を受けて飛んで行くだけだ。

 

 2時間ほどで目的地に到着した。「ここら辺のはずだが・・・町が見えんな」そらどんの声にみんなも下をのぞいてみる。確かに町などどこにも見えない。あるのはどこまでも続く砂漠だけだ。「何もないよ、そらどん、本当にここなの?」ミノル君が風に負けないように大声で聞くと「間違いない。」とりあえず下に降りて調べてみることになった。

 

 空の上と違い地上には熱気が漂い、息苦しいほどに暑い。みんなが見回してみても、目に入ってくるのは延々と続く砂だけだった。「どこに行っちゃったんだろう?」困惑した様子のミノル君。「もしかして、人間がキライになって、誰にも見つからないところに引っ越しちゃったんじゃないか?」とムタ君もがつぶやく。

 

マナタ君は周りを見回しながら「決め付けるのはまだ早い!もっとよく探してみよう!」とみんなに激をとばした。それぞれが方々に散らばって何か痕跡がないかと歩き回ってみた。大声で呼んでみたり、砂の山の上まで行って辺りを眺めてみたり、そこら辺を掘ってみたりした。しかしやっぱりあるのは砂だけ。まるで町はそっくり消えてしまったかのようだった。

 

探し疲れて集まってきたみんなが、砂の上にドカッと腰を降ろすと、「本当に見つからないねぇ」ミノル君が気落ちした様子でつぶやく。モモタ君も「やっぱりどこかに引っ越しちゃったのかも。」

 

マナタ君は気落ちしてうなだれているみんなを見回すと、ザッと立ち上がり「もしも引っ越すとしても建物ごと引っ越すなんてありえないよ、それにそれならそうと僕たちに何か言っていくはずだろ?だからさ、もう少しだけ探してみようよ。」とみんなに声をかけると、「うん、そうだな」「もう少し頑張ろう」とみんなも立ち上がり歩き出そうとした丁度その時、ものすごい突風が吹き始めた。

 

「うわーっ、なんだこれ!」みんながあわてる中、風よりも大きな声が響いた「こっちへ集まれ!」みんなは目も開けていられない風の中、その声の主であるそらどんの方へ向かって走った。

 

そらどんはみんなが集まって来たのを確認すると大きな翼ですっぽりと包み込んでくれた。翼のドームの外ではものすごい風の音がしているが、中はまるでシェルターのように静かだ。吹き荒れている風の音が段々と小さくなって行き、やがて何も聞こえなくなると、そらどんは翼をたたんだ。

 

「ふわぁ〜死ぬかと思った」「そらどん、ありがとう!」見るとそらどんは頭から背中から砂だらけになっていた。それを見たみんなが「そらどん大丈夫?」と心配そうに聞くと「このくらい大したことはない」と言いながら体をブルブルと震わせて、砂を振り落とした。足元にドサドサと落ちてくる砂の量の多さを見て、改めて突風のすごさを思い知った。

 

「そらどんが居なかったら、俺たち埋まっていたかもしれないな」とムタ君が言うのを聞いてミノル君が「そうか、そうだよ、やっぱり町は埋まっているんだ!」「町は僕たちの足元にあるのかもな」その時、メグロ君が「あれ何だ?」と指を指しながら言った。

 

その方向を見てみると、先ほどとは地形の変わってしまった砂の上になにかが刺さっているのが見える。みんなが走っていって確かめてみると、なんとそれは木の枝だった。「なんでこんなところに木の枝があるんだろう?」モモタ君が言うとじっと見ていたマナタ君が「これ、刺さっているんじゃないよ、埋まっているんだ。」と言った。

 

そういえば町には木が何本も植えられていた。潤滑油をとるためのオリーブの木だ。「ってことはやっぱり!!」おもわずムタ君が叫ぶ。ミノル君が茫然とした様子で「町が全部埋まっちゃったんだ・・・」とつぶやいた。

 

 あれほど大きな町が全部埋まっちゃうなんて・・・誰もが周りを見回し、茫然としていると。「掘り出そう!」マナタ君がポツリと言った。「こんなに広いのに僕らだけじゃ無理だよぉ」「無理かどうかは・・・無理かもしれないけど、やるだけやってみようよ」それを聞いていたミノル君がなにやらブツブツと計算し始めた。そしてしばらくすると「うん、行ける!みんなで掘り出そう、きっと出来るよ!」と元気な声で言った。みんなはお互い顔を見合わせた。

 

「作戦はこうだよ!」ミノル君がみんなに説明をする。聞いたみんなは「な〜るほど!それだったら出来るかも!」ミノル君が元気な声で「名付けて“1体掘ればなんとかなる作戦”だ」。

 

聞いていたそらどんが、「俺はスコップは持てんが・・・手伝えることはあるか?」するとミノル君は「もちろんあるよ。でもすぐに出番はないんで、待っててもらうのも熱くて大変だから呼んだら来てくれるかな?」「わかった」。

 

みんなは準備を整えるために一度家に戻ることになった。広場に戻ると、また明日の早朝に出発することにして、解散し、それぞれが必要なものを準備しに家へと帰って行った。

 

 翌朝、それぞれが必要なものを用意して広場に集まった。「うわー、結構な大荷物になっちゃったね」モモタ君がみんなの用意してきたものを眺めながら言う。「そらどん大丈夫かな?2回に分けなくちゃダメかも」と心配する中、そらどんがやってきた。

 

「そらどん、こんなにあるんだけど大丈夫?2回に分けないと無理かな?」マナタ君が心配そうに聞くと、「あとどれくらいあるのだ?」とそらどん。「え、これだけだけど」「ふむ、それなら1回で十分だ。その代わり、荷物はみんなヒモで縛って一つにしてくれ」。みんなは用意しておいたロープでそれぞれを縛り、ひとまとめにした。

 

「用意ができたら早く背中に乗れ」そらどんに言われてみんなが背中に乗り、振り落とされないようにしっかりつかまると、そらどんは大きくて鋭くとがった足の指で荷物をムンズと掴み、大きくグンと羽ばたいた。自分たちのほかにあんなにたくさん荷物があるのに、いつもとまるで同じように飛んでいくなんて!みんなは改めてそらどんの強さに感心した。

 

 現地に到着し、みんなと荷物を降ろすと、予定通りそらどんは帰って行った。みんなは荷物をほどき、手に手にスコップを取り出した。「さ〜て、掘るかぁ!」「お〜っ!」

 

 みんなは木のまわりを中心にひたすら砂を掘り出した。掘っては砂を運びだし、また掘っては運び出し。1日目はオリーブの木がやっと自分たちの背より高くなるくらいまで掘り出すことができた。

 

夕食にみんながそれぞれ持ち寄った食料で料理を始めようとすると、ムタ君が「今日は初日で疲れたから、俺が持ってきたこれにしようぜ」とリュックから何やら取り出した。見るとそれはムタ君の大好きなハンバーガー・・・のようなものだった。

 

しかしなんだかつぶれている。「なにこれ?」とメグロ君が聞くと、さも当たり前のように「ハンバーガーに決まってるだろ?」「え、なに?なんでこれこんなにペッチャンコなの?」「砂漠は熱いだろ?そしたらハンバーガーなんてすぐに腐っちゃうじゃん。だからそうならないように真空パックしてきたんだ」と得意げに答えた。

 

「おおっ!」みんなは感心して包装してあるビニールをびりびりと破り始めた。ムタ君が想像していた様に、開ければまたふっくらというわけにはいかなかったが、ハンバーガーは美味しく、みんなも大喜びだった。

 

食事が済むと、明日早起きして涼しいうちに作業を始められるようにと、いつもはテレビを見ている時間だけれど、もう寝ることにした。もしかしたら眠れないかもなどと言っていたメグロ君も、予想以上に疲れていたのか、真っ先に寝入ってしまった。

 

 2日目。予定通り朝の4時から起きだし、手早く朝食を摂ったあとすぐに作業に取り掛かった。途中昼食で休憩したほかはずっと作業したおかげで、木は6メートルほどの高さまで掘り出された。

 

しかし、穴の淵は掘れば掘るほど崩れてきてしまうため、深く掘るにはそれ以上に穴を広げる必要があった。そうこうしているうちに、やがて日も暮れ2日目の作業が終わった。

 

「なかなかロボット出てこないなぁ」「この調子でいけば明日には出てくるかもよ」。「早く見つけられると良いなぁ」

 

 その晩はカレーライスを作ってみんなで食べた。そして食べ終わったあとはみんなで冗談を言い合いながら楽しく過ごし、また早めに眠った。

 

 3日目。この日も4時から起きだし、作業を始めた。体が慣れてきたのか、かなり作業が早くなって来た。午前中だけで木は更に2mほど高くなっていた。「たしかオリーブの木って高さが10m位だよね。この分だと、今日中に根元まで掘れるかもしれないぞ」マナタ君が言うとみんなも更に元気を出して掘り続けた。

 

昼になり、昼食を食べていると急に空模様があやしくなってきた。そしてあっという間に空が暗くなり、大粒の雨が降り出した。みんなはテントに避難し、雨雲が通り過ぎるのを待つ。ほんの15分ほどで雨は止み、「さて、また掘るかぁ!」メグロ君の掛け声でみんなはテントから這い出した。

 

最後にミノル君がテントを出ようとした時、最初に飛び出したメグロ君の声が響いた。「うわっ、なんだこれ?」急いで行ってみると8mほどまで掘ったはずの木の高さが、4m位になっていた。雨で淵の砂が崩され、流れた砂がせっかく掘った木を埋めてしまっていたのだ。

 

それを見たみんなは急に疲れが出て、その場に座り込んでしまった。「ああ〜、また昨日からやり直しだ〜」「せっかくあそこまで掘ったのに・・・」。

 

みんなが意気消沈する中、マナタ君は下に降りて行き、木の根元にたまった砂を両手ですくい上げた。そしてそれをしばらくじっと見つめると、明るい顔でみんなに言った。「なあ、みんな来てみなよ。砂が濡れて色んな形が作れるよ。折角だから今から少しだけ、砂遊びしようよ?」みんなは「遊び」と聞いてどれどれとやってきて、てんでに砂を掴んでみて、「本当だーっ、何か作れそう!」「こんなに広い砂場初めてだ!」「トンネル作ろう、トンネル!」と大はしゃぎで遊び始めた。

 

マナタ君とミノル君は砂ダンゴと大きな的を作って点数を競いあい、メグロ君とムタ君そしてモモタ君は今まで見たこともないような大きさの雪ダルマならぬ砂ダルマを作りあげ、そのお腹の辺りに大きなトンネルを作った。しかもそれらを作った砂は当然底から掘り出した砂を使ったので、知らず知らずのうちに1m以上は掘ってしまっていた。

 

そして思う存分遊んだ後にまた作業を開始した。遊んで元気になったのと、砂がまだ湿っていて、乾いてサラサラの時より掘りやすかったおかげで、作業は今まで以上にはかどり、夕暮れまでに木の高さは9mにまでなっていた。

 

 3日目ともなると、さすがに疲れが溜まり、料理するのも億劫なので、今晩の夕食はカップラーメンと缶詰にした。たくさん汗をかいたせいか、カップラーメンのしょっぱさがものすごく美味しく感じられた。2個づつカップラーメンを食べた後には甘い桃の缶詰を開けた。これもまた美味しく、普段は捨ててしまうシロップまで全部飲んでしまった。

 

 満腹になったモモタ君が「ここまで掘ってきたけど、全然ロボットたちが見つからないなぁ」「なぁ〜に、明日にはもう底に届くし、きっとすぐに見つかるよ!」とマナタ君が言うと「そうそう、慌てるなって!」とムタ君が早くも眠そうな声で言う。「今日で3日目か、僕たち随分掘ったなぁ」ミノル君が感慨深げに言うと「なんか俺達ってすごいよな」とメグロ君が得意気に鼻をふくらませた。そしてお腹が一杯になったのと、疲労のせいでいつものようにあっという間に寝入ってしまった。

 

 4日目。「よし、今日は一気に底まで掘るぞ!」マナタ君の掛け声でみんなは勢いよく掘り出した。掘り始めて1時間半後「お、黒い砂が出てきた!」「これ、前に来た時に見た、道に滲みこませたオイルだよ!」「やったー、ついに底まで届いたぞ!」「よし、ここまでは計画通り、次はこの深さを横に広げていくぞ!」

 

黒い砂を頼りにどんどん辺りを掘っていくと「カチン!」「おっ!」「んっ!」みんながその音がした方に集まってくる。最初に見つけたモモタ君が「ぼ、僕見つけちゃったかも!」みんなはシャベルを放り投げ、手で砂をどかしていくと、それは待ち望んでいたロボットの片方の脚だった。

 

もう少し掘ってみるともう1本脚が出てきた。しかし最初の脚とは形が違う。別のロボット発見か!と思い、掘り進んでみると、それは左右で違う足を付けた一体のロボットだった。しかし、見つけたとはいえ、ロボットの重さは半端ではない。そこでマナタ君が襟の裏から羽根を取り出すと、思いっきり吹いた。

 

そらどんが到着する頃には、ロボットは背中のあたりまで掘り出されていた。「それじゃそらどん、これお願い!」「わかった」言うとそらどんは鋭いかぎづめで周りの砂ごとロボットを掴み、一気に引きぬいた。ズボボボーッ。それは大きさが2m近くもある人間型のロボットだった。

 

「やったーっ!」そらどんが引きぬいたロボットを静かに地面に横たえた。そらどんは「さて、次は何をするのだ?」「ごめん、頼みたいことはこれだけなんだ」とミノル君がすまなそうに言うと、「・・・そうか、それではまた用ができたら呼んでくれ」と言い残し、ちょっと寂し気に大空へと帰って行った。「そらどん、ありがとう!」

 

みんなは見送った後、持ってきた荷物の中からオイルやブラシ、バッテリーを取り出した。そして全ての関節にこびりついた砂をオイルとブラシで丁寧に取り除く。バッテリーからコードを伸ばし充電を始めると、やがてロボットの目に光が灯った。だが、こんな小さなバッテリーでは普通に動けるようになるにはまだまだ足りない。

 

ミノル君は「もう話は出来る?」とロボットに話しかけた。「ハイ ダイジョウブ デス。」「ねぇ充電できる場所はこの近くにないかなぁ?」するとロボットは首をゆっくりと1回転させて周りを確認すると「アノ キ ノ ネモト ニ コード ガ シマッテ アリ マス」

 

調べてみると、根元に薄い金属の蓋が見つかり、それを開けてみると長いコードがくるくるとまるめて仕舞われているのを見つけた。早速コードを伸ばし、ロボットに接続するとバッテリーの時とは違い、かすかにブーンという音が聞こえた。急速充電が開始された音だ。

 

接続してから20分もしないうちにロボットは立ち上がり自分でコードを引き抜いた。「マンタン デス」「早っ!」「俺のラジコンなんか8時間充電なのに!」「あれ、でもまだ言葉がカタコトだね」「ワタシ ハ サギョウ ヨウ ロボット ナノデ ハナス ノハ トクイ デハ アリマ セン」「じゃあ、もう治ったの?」「イゼンヨリ モ チョウシ イイ ヨウデス」「そうか、良かった〜」

 

「それじゃ教えて、一体どうして町は埋まっちゃったの?」「イマカラ 21ニチ マエ ノ 19ジ 54フン ニ トツゼン スナ アラシ ガ マチ ヲ オソイ マシタ。アマリ ノ ハゲシサ ニ ダレ モ ニゲル コト ガ デキズ ソノママ ウマッテ シマッタ ノ デス」「やっぱりそうだったんだ」「それじゃこれから君の仲間を助けるんだけど、君も手伝ってくれるね」「カシコマリマシタ」。

 

ロボットが一体加わっただけで作業のスピードは見る見る上がった。なぜならロボットはみんなと違い、充電するときに休むだけで働き続けることができたからだ。

 

みんなが昼ご飯を食べているとき、ずっと働き続けているロボットにミノル君が聞いた。「君って1回の充電でどのくらい動けるの?」ロボットは手を休めることなく首だけをこちらに向けて「48 ジカン ハタラク コト ガ デキ マス」「すげーっ!」みんなは感心して声をあげた。

 

「捨てられたロボット達が作った町なのに、そんなすごいロボットもいるんだね」「ワタシ ハ アシ ヲ ハソン シ ソノタメ ニ ハイキ サレマシタ」「え、それだけで?」「ワタシ ハ サイシンシキ ノ ロボット カラ 3 ダイ マエ ノ キシュ デス シタガッテ シュウリ スル ヨリ コウシン シタ ホウ ガ コウリツ テキ ト ハンダン サレタ ノ デショウ」

 

「ええっ、そんなの酷いよ!」「前の持ち主はなんて奴だ!」みんなが口々に言うと「ソレ ガ ヒドイ ノカ ドウカ ハンダン デキル ヨウニ ハ プログラム サレテ イマセン シカシ イマ モ コウシテ ウゴイテ イル ソレ ハ ・・・ ソレ ハ・・・スミマセン テキセツ ナ コトバ ガ ワタシ ノ ジショ ニ アリマ セン」

 

「それはね“幸せなこと”だよ」「タンゴ トウロク“シワセナ コト”トウロク カンリョウ。ソレ ハ シアワセ ナ コト デス」「そうそう!」「そうだよ!」「さあ、僕たちも作業開始だ!」

 

みんなが頑張って掘り出したおかげで、日が暮れる頃には更に2体のロボットを発見した。そのたびにオイルで関節を洗い、充電し、動けるようになると次々に作業に加わっていった。

 

 みんなが夜寝ている間もロボットたちは作業を続け、朝には10体ものロボットと2台のトラック型ロボットを掘り出していた。そうなるとマナタ君たちは掘るのはロボットに任せ、ロボットの掃除に集中することにした。

 

 掘り出したロボットがまた別のロボットを掘り出し、そのロボットがまた別のロボットを掘り出しと、気がつけば30体ほどのロボットがそこいら中で仲間を掘り出していた。これこそがミノル君の考え出した“1体掘ればなんとかなる”作戦だった。

 

順調に動けるようになるロボットは増えていったが、問題が出てきた。洗浄するためのオイルがもうほとんど無くなってしまったのだ。予定では無くなる前にオイルがしまってある倉庫を発見することになっていたのだが、それらしい建物は全然見当たらない。

 

「う〜ん、困ったなぁ」そう言っている間にもどんどん掘り出されたロボットたちが集められてくる。最後の頼みだった、オリーブの実も埋まっている間に全て無くなってしまっていた。


→ 後編へ続く


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